AI選別機とAI選果機

2025-08-05  2025-08-05

野菜・果実等の輸出額の推移と今後の展望

出典:農林水産省・輸出・国際局

農林水産省によると、2022年の農林水産物・食品の輸出実績は1兆4,148億円となり、過去最高を記録しました。特に日本産の果物は、高い品質、優れた食味、美しい外観が評価され、海外では「高級品」や「贈答品」としてのブランドを確立しています。

中でもシャインマスカット、リンゴ、イチゴは、海外で非常に高い人気を誇り、高値で取引されています。

今後も、こうした日本の果物・野菜の輸出額はさらに増加していくことが期待されています。

一方で、輸出需要の増加に対応するには、安定した品質と十分な供給量を確保できる体制の構築が不可欠です。特に、生鮮品である野菜や果物は収穫後の劣化が早いため、迅速に出荷できる体制を整える必要があります。

このような課題に対処するため、近年注目されているのが、AI選別機・選果機の導入です。

出典:農林水産省・輸出・国際局公式サイト.2022年1ー12月 農林水産物・食品の輸出額.(令和5年2月3日).https://www.maff.go.jp/index.html,(引用日2025-07-04)

AI選別機・選果機の役割と機能

AI選別機・選果機

AI選別機・選果機は、センサーやカメラを用いて果物や野菜の外観や内部の状態を検査し、不良品と良品を自動で判別するAI搭載の外観検査装置です。

以下のような多様な検査が可能です。

内部検査(非破壊)

AI選果機・内部検査(非破壊)

センサーとAIで使用することで、果物や野菜を切ることなく内部の状態を非破壊で検査できます。

主な項目は以下の通りです。

  • 糖度・酸度
  • 熟度
  • 内部の空洞や腐敗
  • 病気の有無

外観検査

AI選果機・外観検査

AIカメラや高精度カメラにより、表面の異常や劣化を検出します。

  • 生傷や打ち身
  • 腐敗・カビ
  • 浮皮(果皮が浮く現象)
  • 表面から判断できる病気や変色

食品加工の現場においても、原料の品質は非常に重要です。

例えば、ケチャップなどにカビのある果実が混入すると、風味が変わるだけでなく、品質が大きく損なわれます。このような品質の低下は、製品全体の信頼性を下げ、顧客からの信用にも影響を与えかねません。

また、AI選別機・選果機では、糖度や形状、外観の美しさなどに基づく等級分けも可能です。

等級分け

たとえば、みかんの一種である「マドンナ」のように、等級によって市場価格が大きく変動する果物では、これまで熟練の職人が目視と経験に基づいて等級分けを行ってきました。

しかし、AI技術を活用することで、これらの作業を自動化し、評価基準を統一することが可能になります。これにより、作業の効率化だけでなく、品質のばらつきを抑えることにもつながります。

また、AIは病気の種類を識別する技術としても応用が進んでいます。

農作物の病気にはさまざまな種類があり、それぞれに適した対処法や治療法が求められます。AIが病害を早期かつ正確に特定できれば、的確な農薬や処置の選定が可能となり、病気の拡大を未然に防ぐことができます。

その結果、作物の損失や不作のリスクを大きく軽減し、農家にとっての経済的損失も最小限に抑えることが期待されます。

AI選別機とAI選果機の違いについて

AI選果機は、主に果物や野菜を対象に、不良品と良品をAIで判別する装置です。外観や内部の状態から糖度・酸度・傷・腐敗などを検査し、等級分けまで行うことができます。

一方、AI選別機は、農産物に限らず、工業製品、部品、廃棄物(資源ごみ等)、食品など幅広い対象物を選別できる装置です。AIによる画像認識やセンサーを活用し、さまざまな分野で利用されています。

AI選果機で対応可能な果物・野菜

AI選果機は、さまざまな種類の野菜や果物に対応しています。

野菜の例

  • スイカ
  • サツマイモ
  • キュウリ
  • カボチャ
  • レタス など

果物の例

  • りんご
  • オレンジ
  • さくらんぼ
  • アーモンド
  • コーヒー豆 など

また、モモのように潰れやすく傷がつきやすい果物でも、専用ケースに入れて搬送することで、AI選別・選果が可能です。

このように、検査方法を工夫することで、従来は難しかった果物でもAIによる品質検査を実現できる可能性があります。

続いて、AI選果機を導入する際のカスタマイズ性の高さと導入時のポイントについて解説します。

現在のAI選果機は、多様な農産物の検査に対応できるよう進化しています。ただし、農家や出荷業者によって規格・等級分けの基準や、不良品の定義は大きく異なるのが現状です。

そのため、AI選果機は基本機能を備えたパッケージ製品として提供されつつも、多くの場合、カスタマイズ(受託開発)に近い形で導入されています。

前例のない品種や検査基準にも対応できる可能性がありますので、興味がある場合は、まずはベンダーへ相談・問い合わせを行うことをおすすめします。

AI選別機・AI選果機を最大限に活用するためには

人とAIが協力して検査を行うハイブリッド方式

AI選別機・選果機は、大量のデータを学習することで徐々に精度を高めていくシステムです。 しかし、野菜や果物といった農産物には個体差が大きく、AIにとって明確なルールを見つけにくいケースも少なくありません。

そのため、人とAIが協力して検査を行うハイブリッド方式が、最も効果的とされています。 たとえば、

  • 第1段階として人の手で大きな傷や明らかな不良品を除去
  • その後、AI選別機・選果機による高精度な2次検査を実施

といった流れで作業を行うことで、検査効率と精度の両方を大幅に向上させることができます。逆に、先にAIでスクリーニングし、その後に人の目で最終確認をするパターンも有効です。

継続的な精度向上のためにAIの選別精度を高めるには、不良品と良品の基準を明確に学習させることが重要です。 そのためには、以下のような追加学習を定期的に行う必要があります

  • 新たな不良・病害などの画像データの提供
  • 等級分けや品質基準の具体的な数値・例示の入力
  • 実際の作業現場で発生した例外事例のフィードバック

こうした継続的なチューニング・学習データの追加により、AIはより現場に適した判断ができるようになります。

導入事例:AI選果機能を備えた新選果場の設置(JAみっかび)

導入事例

静岡県浜松市の三ヶ日地区において、JAみっかびは2021年度、最先端技術を結集した新たな柑橘類選果場を設置した。これまでの施設の老朽化や処理能力の限界を受けての刷新でした。特筆すべきは、皮の状態や傷を検査する、外部品質センサーと甘みなどを内部や品質を検査する内部品質センサーとAI(人工知能)を組み合わせたシステムの導入です。外観の傷や病害果といった人の目でしか判断できなかった品質判定をAIが担い、選果の精度と効率が大幅に向上しています。

導入前の課題

人の目の選果精度に限界があり、出荷までに時間がかかっていました。また、外観品質の判断は熟練者による目視に頼っていたため、人手不足や判定のバラつきも課題となっていました。生産者側にも大きな負担があり、家庭選果では「良品以上」「2等品」「加工向け」に細かく分類した上で、さらに2等品の再チェックが必要とされていました。結果として、省力化・効率化が難しく、品質差を明確に打ち出せないことで市場価格も頭打ちになる場面がありました。

導入後の効果

AI画像認識技術の導入により、生傷や病害の自動判別が高精度で可能となり、識別精度は99%に達しました。センサーの性能向上により、1秒あたりの処理能力も5個から8個へと向上し、選別スピードが大幅に改善されています。 ミカンはセンサーで判定された結果をもとに、28条の選果コンベアで等級(秀・優)や階級(L・Mなど)ごとに自動分類され、処理能力は1時間あたり66.9トンに達します。 従来は2回必要だった家庭選果が「2等品以上」と「加工用」の2区分に簡略化され、省力化が実現。これにより市場での品質評価が向上し、出荷単価の上昇にもつながっています。

出典:JAみっかび公式サイト.11/1 新柑橘選果場が竣工 日本最大規模AI導入 .(2021年11月02日).https://mikkabi.ja-shizuoka.or.jp/,(引用日2025-07-04) 出典:JA全中公式サイト.AI選果機能を持つ新選果場の設置 .(2025年7月).https://www.zenchu-ja.or.jp/,(引用日2025-07-04)

AI選別機・AI選果機のまとめ

AI選別機・AI選果機は、人の手による作業と比べて格段にスピードが速く、検査の精度も安定しているため、近年大きな注目を集めています。

ただし、これらの機器は一定の初期投資が必要であり、導入は収穫量が多く、品質や収益性の高い農家に限られる傾向があります。

そこで今後は、複数の農家や生産者が協力して導入する共同利用の仕組みを検討することで、コストを抑えつつ、価格競争に巻き込まれがちな農家の収益向上につなげることが期待されます。

また、AIを導入するだけで完結するのではなく、人とAIが役割を補完し合いながら、継続的に精度や運用方法を改善していく体制が重要です。 このような協働型の運用こそが、AI選別機・選果機を最大限に活用し、農業の生産性と品質を向上させるカギとなるでしょう。