製造業におけるAI外観検査活用事例集

2025-08-16  2025-08-17

AI外観検査活用事例

近年、製造業では深刻な人手不足が課題となっており、その解決策のひとつとしてAIの活用が注目されています。なかでも目視検査の分野では、AIによる外観検査への置き換えが進みつつあります。AI外観検査を導入することで、品質の安定化と生産性の向上を同時に実現できる点が大きなメリットです。

それでは、実際にどのような導入事例があるのかを見ていきましょう。

導入事例:シリコーンゴム製品のAI外観検査

トーホーポリマー株式会社では、長年にわたり、医療機器や電子機器に使用される繊細なの外観検査を、熟練検査員による目視で行ってきました。微細な汚れや凹凸をミクロン単位で見極めるには、熟練作業者の経験と感覚が不可欠だったためです。

導入課題

従来、同社ではすべての製品を目視で検査した後、ランダムに抜き取って再確認する「二重検査」を行い、品質の維持・向上に努めてきました。しかし、この方法は熟練検査員の経験や勘に依存する属人的なものであり、判定基準や精度に検査員ごとのばらつきが生じる課題がありました。

さらに、一部の製品では1箱(480個)の検査に2時間以上を要し、拡大鏡を使った長時間作業が検査員の身体的負担となっていました。こうした負担は視認力の低下を招き、まれに不適合品の見逃しにつながるリスクもあります。加えて、熟練人材の不足も深刻化しており、安定した検査体制の維持が難しい状況となっていました。

  • 目視検査と「二重検査」による品質維持は、検査員の経験や勘に依存しており属人的
  • 判定基準や精度に検査員ごとのばらつきが発生
  • 一部製品では、1箱(480個)の検査に2時間以上を要していた
  • 拡大鏡を用いた長時間作業で、検査員に大きな身体的負担
  • 負担による視認力低下で、不適合品の見逃しリスクあり
  • 熟練検査員の不足により、安定した検査体制の維持が困難

導入後効果

AI外観検査の導入により、1箱あたりの検査時間は半分に短縮1時間で最大480個の検査が可能になり、作業効率は約2倍に向上しました。AIによる判定基準の「見える化」で、熟練者のノウハウが数値化・記録化され、技術継承も可能になりました。さらに、検査精度のばらつきがなくなり、品質保証の再現性が向上。

不適合品の傾向分析や改善活動にもつながり、品質向上と人材不足解消の両面で大きな効果を生み出しています。

  • 1箱あたりの検査時間を半減、1時間で最大480個を検査可能に
  • 作業効率が約2倍に向上
  • AIによる判定基準の「見える化」で、熟練者のノウハウを数値化・記録化
  • 技術継承が可能になり、人材不足の課題を緩和
  • 検査精度のばらつきが解消し、品質保証の再現性が向上
  • 不適合品の傾向分析や改善活動に活用でき、品質向上に寄与
出典:アプライド株式会社.職人技を再現しつつ、技術継承も可能にしたAI検査機器。検査スピードが2倍にUPし、製品の品質向上にも貢献.https://mfrdx.applied-g.com/,(引用日2025-08-14)

導入事例:スズキの塗装AI検査装置

スズキでは、塗装工程後の外観検査において、精度の向上と省人化を目的に「塗装AI検査装置」を導入しました。 このAI外観検査機は、生産ラインに接続された長さ2メートルのトンネル型装置で、内部にカメラが設置されています。製品がトンネル内を通過するだけで、自動的に検査が完了します。

導入前の課題

従来は、マシンビジョンカメラと専用画像処理ソフトウェアを使って検査を行っていましたが、小さな傷や微細な異物を見逃してしまうことがありました。さらに、目視検査では作業員の疲労によって見逃しが発生することもありました。また、人件費の面でも、1日2シフトで合計12名の検査員が必要で負担が大きく、検査結果も工程改善に十分活かせない状況でした。

  • マシンビジョンカメラと専用画像処理ソフトでは、小さな傷や微細な異物を見逃すケースがあった
  • 目視検査では作業員の疲労により見逃しが発生するリスク
  • 1日2シフトで合計12名の検査員が必要となり、人件費負担が大きい
  • 検査結果を工程改善に十分活用できず、データの有効活用が不十分

導入後の効果

1シフト4名×2シフトの8名体制に縮小でき、年間8,000万円以上のコスト削減を実現しました。AIと専用カメラによる自動検査で小さな傷も正確に検出でき、結果はデジタルで保存されるため、原因分析や工程改善に活用可能です。さらに、高速コンベアへの対応も可能となり、15m/分(搬送速度)高速検査・処理対応での効率的な検査体制が確立しています。

  • 検査体制を 12名 → 8名 に削減し、数年後には年間8,000万円以上のコスト削減を実現
  • AI+専用カメラで小さな傷や異物も高精度に自動検出可能に
  • 検査結果をデジタルで保存し、原因分析や工程改善に活用できる仕組みを構築
  • 高速コンベアに対応し、15m/分の搬送速度でも安定した高速検査を実現
  • 精度と効率を両立した検査体制を確立
出典:aperza TV.トヨタとスズキが導入!外観検査の生産性向上に導いたシステムとは.https://tv.aperza.com/,(引用日2025-08-14)

導入事例:フィギュアのAI外観検査

グッドスマイルカンパニーは、フィギュアや玩具の企画・制作・製造・販売を一貫して手掛け、数万個単位で多様なフィギュアを生産しています。その製作工程は非常に繊細で、多くの工程が熟練職人の手作業によって行われています。

導入前の課題

同社では、海外での需要が急速に拡大していたものの、生産体制が追いつかず、受注から出荷までに半年から一年を要する状況が続いていました。そのため、消費者が最も購買意欲を持つタイミングで商品を届けられず、機会損失が発生していました。

加えて、生産ラインのスピードに合わせた検査体制が求められる中、目視検査では待ち時間や検査員ごとの基準のばらつきが生じていました。

その上従来の機械検査では、不良品のサンプルを意図的に作成し、それを学習データとして良否を判定する方式を採用していました。 しかし、この方法は多品種少量生産を前提とするフィギュア製作には適していません。 また、面相パーツのような微細な部位に生じる不良を安定して検出することが難しいという課題がありました。

  • 海外需要が急拡大する一方で、生産体制が追いつかず、受注から出荷まで半年〜1年かかることもあり、機会損失が発生
  • 生産ラインのスピードに対応するために検査体制が必要だったが、目視検査では待ち時間や検査員ごとの判定基準のばらつきが問題に
  • 従来の機械検査は、不良品サンプルを学習データにして判定する方式であり、多品種少量生産のフィギュア製作には不向き
  • 面相パーツのような微細な部位で発生する不良を安定して検出できず、品質保証

導入後の効果

AIによる検査システムを導入するにあたり、最適なカメラの選定から着手し従来では撮影が難しかった面相パーツや細部の造形も鮮明に捉えることが可能となり、不良の検出精度が大幅に向上。検査AIの正答率は99.2%に達しました

そのため、繊細な造形や彩色といった“人の感性”が求められるフィギュア製作工程には職人を集中投入し、検査のように再現性とスピードが重視される工程はAIと機械が担うという役割分担が実現。結果として、生産効率は大幅に向上し、需要の拡大に対応できる柔軟な体制を整えることができました。

  • 最適なカメラ選定により、従来は撮影が難しかった面相パーツや細部造形も鮮明に撮影可能に
  • 不良検出精度が大幅に向上し、検査AIの正答率は 99.2% を達成
  • 繊細な造形や彩色など“人の感性”が求められる工程に職人を集中投入できる体制を確立
  • 検査工程はAIと機械が担うことで、再現性とスピードを両立
  • 生産効率が大幅に向上し、需要拡大にも柔軟に対応できる生産体制を実現
出典:株式会社MENOU公式サイト.人とAIの共存で進化するフィギュア製造、高品質の維持と生産性向上への挑戦.https://menou.co.jp/,(引用日2025-08-14)

導入事例:切削加工のAI外観検査

乾光精機製作所は、半導体製造装置向けの部品を中心に、切削加工による製品を製造・販売しています。 同社では、製品の品質確認をより効率的かつ正確に行うため、AI画像検査システムを導入しました。 このシステムの活用により、熟練作業者に頼っていた目視検査からAIによる自動検査へ移行し、検査精度とスピードを大幅に改善しました。

導入前の課題

従来のルールベース検査では、製造工程で必然的に生じる切削跡を「傷」と誤判定してしまい、不良品扱いになることが多発。濃淡の違いによる誤検知も発生していました。 また、薄い傷の検出や判定には熟練作業者のノウハウが必要でした

加えて、同社では100個を500〜600種類といった少量多品種の生産を行っており、製品ごとに検査設定を作成するのは非現実的。 設定作業の負担やコスト面から、自動化が難しい状況でした。 そのため、1製品あたり約10分の目視検査が必要で、生産効率を圧迫していました。

  • 傷と切削跡の判別が困難
  • 少量多品種生産における設定負担
  • 検査時間の長さ

導入後の効果

AI外観検査の導入により、「不良個所学習機能」により、数枚の不良画像を学習させるだけで、切削跡を無視し本当に必要な傷のみを正確に検出。 コンマ数ミリの小さな傷もほぼ誤検知なく検出できるようになりました。

加えて、AIモデルは汎用性が高く、同じ種類の不良であれば異なる製品にも設定をそのまま使い回し可能。 製品ごとに合格品画像を10数枚追加学習させるだけで、新しい品種の検査にも対応でき、少量多品種生産でも効率的な自動検査を実現しました。

結果的に、検査時間は1個あたり10分から2.5分へ短縮。 2万枚の検査で見逃しゼロで、過検出も最小限に抑えることに成功しました。

  • 高精度な傷検出
  • 高い汎用性による設定工数削減
  • 検査時間が10分から2.5分へ短縮され、大幅な検査時間短縮
出典:株式会社MENOU公式サイト.人とAIの共存で進化するフィギュア製造、高品質の維持と生産性向上への挑戦.https://menou.co.jp/,(引用日2025-08-14)

導入事例:アルミダイカストのAI外観検査

旭工精株式会社は、自動車部品をはじめとした精密機械パーツの製造を手がける企業で、特にアルミダイカスト技術に強みを持っています。ダイカストとは、金型に溶かした金属を流し込んで成形する鋳造方法の一つです。

今回、同社はダイカスト製品の表面検査における品質向上と省人化を目的に、当社のAI外観検査システムの導入を決定しました。

導入前課題

これまでも検査の自動化に挑戦してきましたが、従来のAIでは判定理由が不明確で、人間の目視検査に匹敵する精度を出すことが難しい状況でした。また、複雑な形状や高い品質基準を求められるダイカスト製品では、人の感覚による絶妙な判断が不可欠とされ、完全な自動化は難しいと言われていました。しかしながら、検査員不足や不良品の流出防止も大きな課題でした。

従来のAIでは判定理由が不明確で、人間の目視検査に匹敵する精度を出すことが困難

複雑な形状や高品質基準を求められるダイカスト製品では、人の感覚による判断が不可欠とされ、完全自動化が難しいと考えられていました。 検査員不足が深刻化し、不良品流出のリスクが課題となっていた

導入効果

そこで、ダイカスト表面検査に特化したAIを導入した結果、これまで6名必要だった検査員が2名で対応可能となり、目視検査員を三分の一に削減できました。ヒューマンエラーがなくなり、品質の均一化も可能になりました。さらに、この成功を受けて、他の製造ラインやプロジェクトへの展開も検討が始まっています。

  • ダイカスト表面検査に特化したAIを導入したことで、検査員を 6名 → 2名 に削減
  • ヒューマンエラーがなくなり、検査品質の均一化を実現
  • 成果を受け、他の製造ラインやプロジェクトへの展開も検討が進行
出典:株式会社HACARUS公式サイト.ダイカストの表面検査の自動化を実現する協働ロボット+AI外観検査【動画】.https://hacarus.com/ja/,(引用日2025-08-14)

まとめ

AIは、誰が作業しても結果が変わらない定型業務や、付加価値を生まない繰り返し作業を置き換えることが可能です。その結果、本来人の手でしか担えない繊細な工程に人員を集中させることができ、生産性の向上につながります。

さらに長期的に見れば、AI導入によって大幅なコスト削減や投資回収が期待できるケースも少なくありません。近年は補助金制度も拡充されており、国全体としてDX推進が強力に後押しされています。

特にAI外観検査は、検査精度の高さと生産効率の向上を同時に実現できる有効な手段として、多くの製造現場で注目を集めています。