AIとロボットが変革するフードテック。食料問題から人手不足まで、未来の食を支える技術とは?

2025-05-25  2025-05-25

フードテックに注目が集まる背景

出典:農林水産省公式サイト

世界的な人口増加に伴い、2050年には世界の食料需要が2010年比で 約1.7倍、約58億トンに達すると予測されています。これに対応するためには、食料の安定供給が不可欠であり、生産性の向上が強く求められています。その中で、 AI(人工知能)やロボット、フードテックといった先端技術に注目が集まっています。

特に日本においては、フードテックの発展が、日本独自の「お弁当文化」や栄養バランスに優れた「食文化」の海外普及に貢献するだけでなく、フードテックそのものの技術輸出にもつながると期待されています。これにより、食品業界全体の 生産性向上 国際競争力の強化が見込まれています。

また、食品工場は作業環境が過酷であることから人材が集まりにくく、慢性的な人手不足が課題となっています。AIやロボットの導入により、こうした人手不足の解消にもつながると期待されています。

それでは、フードテックとAI・ロボットの活用によって、具体的に何が可能になるのかを見ていきましょう。

参考サイト:農林水産省公式サイト. “ フードテックをめぐる状況 ”.https://www.maff.go.jp/.(令和7年4月)(引用日2025-5-22)

AI外観検査

AI外観検査

AI外観検査は、 製品に異物が混入していないか、形状に不良がないかを確認する検査機器です。従来の検査機器とは異なり、人の経験や勘に頼った目視確認をAIが代替できる点が大きな特長です。

特に食品分野では、製品ごとの個体差が大きいため、「どこまでを良品とするか」といった判断は、これまで熟練作業員の経験に基づいて行われることが一般的でした。しかし、AI外観検査を導入することで、そのような判断も自動化され、人による目視確認を置き換えることが可能になります。

食品工場における外観検査は、細かな異物を取り除くなど、目に大きな負担がかかる作業が多くあります。また、食品は消費者に安全でおいしいものを届ける必要があるため、品質管理は非常に重要な役割を担っています。AI外観検査は、この品質管理を効率化・高度化する有効な手段です。

またX線を使ったAI外観検査は、 食品の中に入り込んだ異物(小骨や金属、プラスチック)なども検査できます。 このほかにも、小袋の噛み込みなども行えます。

また近年はAI外観検査とロボットを連帯させ、不良品を取り除くことも可能になってきました。

AIロボット

不定物カットロボット

出典:株式会社ロビット

不定物カットロボットは、 野菜や果物などの芯をくり抜くロボットです。 レタスやかぼちゃのような野菜には芯があり、これを包丁などでくり抜く作業は固くて危険を伴います。画像認識AIと連携することで、ロボットが芯の位置や大きさ・深さを正確に認識し、安全かつ効率的に芯をくり抜くことが可能です。

野菜や果物、魚介類などは個体差が大きいため、人手による判断が必要でしたが、AIロボットを活用することで、 個体ごとの違いに対応しながら作業の自動化と効率化を実現できます。

出典:HAL CORPRATION公式サイト
参考サイト:PR times 株式会社ロビット. “ フードテックをめぐる状況 ”.https://prtimes.jp/.(2023年12月13日)(引用日2025-5-22) 参考サイト:HAL CORPRATION公式サイト. “ 人の作業をロボットと分業し、より正確に作業負担を軽減 ”.https://hal-corp.jp/.(引用日2025-5-22)

調理AIロボット

出典:ユーハイム公式サイト

バームクーヘンのような焼き菓子では、生地にどれだけ熱を通すかが味に直結するため、自動化が難しいとされてきました。 しかし、 AIが焼き加減や火の通り方を学習することで、職人の感覚を再現し、機械による自動化が可能になりました。

また、フライ工程では、ロボットが食材を並べてベルトコンベアに載せることも可能です。これまで難しかった、柔らかい素材を優しく掴んで移動させる作業も、AIロボットの導入により実現しています。

参考サイト:ユーハイム公式サイト. “ ユーハイムが2025年大阪・関西万博にカフェをオープン AIと人が共に働く、未来のバウムクーヘンカフェ 「THEO’S CAFE by JUCHHEIM」―AI職人「THEO(テオ)」が焼きあげたバウムクーヘンを万博会場から世界の人々に提供― ”.https://www.juchheim.co.jp/.(2025年2月5日).(引用日2025-5-22)

盛り付けロボット

盛り付けロボットは、 お惣菜やお弁当の具材などを定量で掴み、容器に盛り付けるロボットです。

食品は個体差があり、硬さや形状もさまざまなため、ロボットにとって盛り付けは非常に難しい作業でした。しかし、 AIが食材の形や質感を認識し、最適な掴み方を判断することで、柔らかいポテトサラダなども丁寧に扱えるようになっています。

お弁当には欠かせないご飯などの盛り付けも可能となり、人の手に頼っていた盛り付け作業を自動化できます。

出典:コネクテッドロボティクス株式会社公式サイト

ピッキングAIロボット

出典:株式会社closer公式サイト

ピッキングAIロボットは、製品を指定の場所に正確に移動させるロボットです。

食品工場では、わさびや麺つゆのような小袋製品を容器に盛り付ける作業に使われます。液体の入った柔らかい形が安定しない袋やランダムに配置されたものでも、AIが形状を認識して掴むことができるため、これまで人手が必要だった作業の自動化が進められます。

蓋閉めロボット

蓋閉めロボットは、 容器の蓋を自動でしっかりと閉めるロボットです。

食品容器の蓋閉め作業は、容器の形状や蓋のはまり具合、密閉の強さなどが製品ごとに異なるため、これまで自動化が難しい工程とされてきました。

しかし、AIロボットの導入により、 蓋の形状や素材に応じて力加減を調整しながら、確実に蓋を閉めることが可能になりました。この結果、品質の均一化と作業の効率化を実現しています。

出典:コネクテッドロボティクス株式会社公式サイト

AMR

AMR(Autonomous Mobile Robot)は、 工場内でお弁当や食品を自動で搬送するロボットです。

AMRは、障害物を自動で認識・回避しながら、 最適なルートを自ら判断して移動します。食品は衝撃に弱く崩れやすいため、AMRによる安定した搬送は、商品の品質保持にもつながります。

また、冷蔵庫や冷凍庫など、人が作業しづらい環境でも問題なく稼働でき、省人化と効率化を実現します。 また、工場内の衛生管理の観点からも、AMRを応用したAI清掃ロボットを導入することで、床面や作業エリアの清掃を自動化し、常に清潔な環境を維持することが可能です

AIとiot

また、生産管理の面でも、AIを活用することで需要の予測が可能となり、生産量の最適化や人員配置の効率化が図れます。IoTと組み合わせることで、設備の稼働状況やライン全体の動きをリアルタイムで把握し、より精度の高い生産計画やトラブルの予防にもつなげることができます。

具体的な導入事例と効果

出典:一般社団法人日本惣菜協会公式サイト

株式会社デリモは、調理麺やお惣菜などの加工食品を製造・販売している食品メーカーです。 これまで、同社の麺惣菜の盛付作業はすべて人の手によって行われてきました。 具体的な作業内容は以下のとおりです。

  1. 容器に麺を入れる
  2. つゆ入り小袋をのせる
  3. 刻み葱入りの猪口をのせる
  4. 具材をのせる
  5. 蓋を閉める
  6. 検査を行う
  7. 容器を番重に入れる
  8. 番重を台車に載せる
  9. 台車を冷蔵庫へ運ぶ

このうち、②(つゆ小袋の搭載)、③(刻み葱入り猪口の搭載)、⑤(容器の整列)、⑥(蓋閉め)、⑦(検査)、⑧(番重への移載)、⑩(冷蔵庫への搬送)の7工程を自動化するロボットを開発し、それらを統合した「麺惣菜盛付工程統合ロボットシステム」を株式会社デリモの工場に導入しました。

②つゆ小袋ピッキングロボット

出典:株式会社closer公式サイト

「つゆ小袋掲載」は、めんつゆ小袋を自動でピッキング・お弁当箱に載せるロボットです。業界最速※の毎時1,200食に対応可能です。

これまで、液体入りの小袋は形が安定せず、バラバラに置かれているため、ロボットによるピッキングが困難でした。そのため、多くの惣菜工場では人手による盛り付けが一般的でした。

しかし、「PickPacker」は独自の3DビジョンAIと高度なロボット制御技術を駆使することで、これらの課題を克服し、小袋の自動ピッキング・投入を、高速で行うことが可能です。

本装置はコンパクトな設計で既存の生産ラインにも組み込みやすく、現在は麺惣菜の自動盛付工程の一部として、株式会社デリモの現場に導入されています。

③ 刻み葱入り投入システム

刻んだ葱を決まった量だけカップに盛り付けるシステムで、カップ自体も自動で供給されます。人手ではバラつきやすい計量作業を安定して行えるようになり、品質と効率が向上しました。

⑤ 容器の清流化システム

「容器の清流化」とは、容器が正しい向き・間隔で滞りなく次工程へ流れるよう整える仕組みのことです。

コンベア上を不規則に流れてくる容器のままでは、ロボットの性能を十分に発揮できません。そこで、新たに「容器清流化システム」を開発し、蓋閉め工程の処理能力を最大1,200個/時から1,500個/時へ向上させました。 清流化装置単体でも、1時間あたり最大3,000個の容器を整列できる高性能を誇ります。

⑥ 蓋閉めロボット

出典:コネクテッドロボティクス株式会社公式サイト

蓋閉めロボットは、自動で容器の蓋を確実に閉めるロボットのことです。 蓋閉め作業は、容器の形状や蓋のはまり具合、密閉の加減が製品ごとに異なるため、自動化が難しい工程とされてきました。

今回導入された蓋閉めロボットは、AIとロボットコントロール技術を活用することで、この作業の自動化に成功しました。さまざまな規格の蓋にも対応できる設計となっています。

このロボットは1日15〜16時間の稼働が可能で、稼働率は約80〜90%。1台で約2万食、2台体制で最大4万食の蓋閉め作業をカバーできます。

⑦ AI品質検査機

出典:アンリツ株式会社公式サイト

X線で製品内部を透視し、プラスチックや金属などの異物、また形状が異なる不良品を検出できるAI品質検査機を導入しました。

AIの画像解析により、形の異なる異物も高精度に検出可能で、目視では発見が難しい不具合にも対応できます。

⑧ 移載ロボットシステム

「移載ロボットシステム」は、製品をある場所から別の場所へ自動で移すためのシステムです。

惣菜や弁当の製造現場では、ベルトコンベアで流れてきた商品を「番重」と呼ばれる箱に移し替える必要があります。この作業をロボットが代行し、自動で行います。

⑩ 自動搬送ロボット

出典:GEクリエイティブ株式会社公式サイト

番重を積んだドーリー台車を牽引し、冷蔵・冷凍庫まで製品を自動搬送する自律走行型の搬送ロボットも導入されました。エレベーターの利用にも対応しており、工場内の物流を大幅に効率化しています。

導入効果予測

この結果、1ラインあたり約10名必要だった作業者を5名削減することが可能になり、生産性は200%向上し、ラインがフル稼働した場合、年間で約2,000万円の人件費削減効果が見込まれています。

出典:一般社団法人日本惣菜協会公式サイト.経済産業省・日本ロボット工業会 主催 / 日本惣菜協会 共催 2024 年度(令和 6 年度) ロボフレ事業報告会 惣菜・弁当盛付全工程ロボット化の集大成 ~食品産業の未来を変える!~ .(2025 年 3 月 18 日).https://www.nsouzai-kyoukai.or.jp/,(引用日2025-05-24) 出典:経済産業省公式サイト.ロボットフレンドリー 食品編.https://www.meti.go.jp/,(引用日2025-05-24)

まとめ

フードテックは、今後さらに市場規模の拡大が見込まれる、国内外から注目されている成長分野です。 今後は、中小企業でも導入しやすい低コストな技術の普及が期待されており、食品工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)は一層加速していくでしょう。 また、日本独自の「お弁当文化」とともに、フードテック技術の海外展開が進むことで、世界に向けた新たな価値創出にもつながることが期待されます。