製造業における課題とAI活用の可能性

2024-09-28  2024-10-08

日本の製造業における課題

日本の製造業は、GDPの約2割を占める基幹産業であり、高度な技術力と生産性で世界をリードしてきました。
しかし、近年は、少子高齢化、新興国の追い上げ、そして企業のリスク回避体質により、競争力が低下しています。
経済産業省の「製造白書」によると、日本の製造業のROCは、主要な競合国と比較して大幅に低いことが明らかになっています。
特に、電子部品製造業では、その傾向が顕著です。

※ROC(総資本利益率)は、会社が持っているお金(資本)をどれだけ上手に使って利益を出しているかを表す指標です。

たとえば、会社が使ったお金に対して、どのくらいの利益を得られているかを見るためのものです。
ROCが高いと、「少ないお金でたくさんの利益を出せている」という意味になります。
逆に、ROCが低いと、「お金をたくさん使っても、あまり利益が出ていない」ことを示します。
つまり、ROCは企業が効率よくお金を使えているかどうかを簡単に知るためのものです。

企業がリスクを回避する背景には、終身雇用制度年功序列制度といった日本特有の企業文化、短期的な利益重視の経営、そして金融機関の保守的な融資姿勢などが考えられます。
これらの要因が複合的に作用し、企業は新しい技術やビジネスモデルへの投資を躊躇し、結果として製品の差別化が進んでいません。

中小企業が直面する課題は非常に深刻です。 特に、専門技術を持つ人材の確保が難しい点が大きな問題となっています。
さらに、グローバル化や少子高齢化といった日本経済の構造変化に対応するためには、新たなビジネスモデルの構築や技術導入が求められます。
しかし、中小企業は大企業に比べて金融機関からの融資が難しく、行政の支援も十分ではないのが現状です。 それにもかかわらず、日本経済の活性化においては、中小企業の成長が不可欠です。

こうした課題に対しては、IT化やデジタル化AIの推進が鍵となります。 これにより、生産性の向上や新規顧客の開拓が可能となり、中小企業の競争力が強化されます。
特に、製造業においては大企業、中小企業問わずAIの活用が有効です。 無駄やコストを削減し、資本効率(ROC)を高めることで、日本の製造業は再び世界の先頭に立つ可能性を秘めています。
人材不足の解決にも、これらの技術革新が寄与するでしょう。

それでは製造業におけるAIの活用導入について見ていきましょう。

製造業におけるAIの活用導入

中小企業の課題を克服し、日本経済を再び活性化させるためには、デジタル化推進とAI技術の導入が重要なポイントとなります。

製造業におけるAI導入は、生産性の向上、品質の安定化、コスト削減など、さまざまなメリットをもたらします。
近年、AI技術の進展とデータ収集・分析技術の発展により、AIの導入は加速しています。

製造業におけるAI導入

予知保全

AIを活用した予知保全では、設備の状態を常時監視し、故障の兆候を早期に検知することで、計画的かつ効率的なメンテナンスが可能です。
これにより、設備の寿命が延び、突発的な故障による生産停止を防ぎます。これにより、生産計画の安定化と従業員の安全向上も実現されます。

工程の最適化

生産計画や工程内の業務の効率化を図るために、AIはボトルネックを特定し、最適な解決策を提示します。 製品にセンサーを取り付けることで、稼働状況をリアルタイムでモニタリングし、さらなる生産工程の最適化が可能になります。

品質管理

AIは、画像認識技術を用いて人間の目では見つけにくい微細な傷や変形を高精度に検出します。
また、熟練工による検査作業をAIに置き換えることで、検査速度と精度が向上し、安定した品質管理が可能です。

コスト削減

AIは、エネルギー消費量の最適化や需要予測の精度向上を通じて、コスト削減に貢献します。
これにより、過剰な在庫を防ぎ、在庫管理コストを削減することができます。

製造業におけるAIの技術

製品検査や不良品検出に画像認識AIを用いることが一般的です。 また、自然言語処理技術を活用して、顧客対応やマニュアルの自動生成を行い、情報伝達の効率化も期待されます。
さらに、機械学習を用いて生産データを分析し、製品の品質予測や工程最適化を実現します。

AI導入における課題

AIの効果的な導入には、高品質なデータが不可欠です。データの収集、整理、クレンジングには多大な時間とコストがかかります。
また、AIシステム導入には初期投資が大きく、効果が現れるまでに時間がかかることもあります。
さらに、サイバー攻撃のリスクが高まるため、セキュリティ対策も必須です。
そして、AIを十分に活用するためには、AIに関する知識やスキルを持つ人材の育成も重要な課題です。 AI導入は多くの可能性を秘めていますが、その成功には適切なデータと人材、そしてセキュリティ対策が不可欠です。

製造業におけるAI導入事例

三ツワポンプ製作所のAI故障予知・予知保全

三ツワポンプ製作所は、AIを活用した故障予知において素晴らしい実績を残しており、経済産業省のガイドラインにも掲載されるなど、その取り組みは注目されています。

AI故障予知とは、人工知能(AI)を用いて、機械や装置が故障する前にその兆候を早期に検出し、事前にメンテナンスを行うことで、突発的な故障による生産停止やコスト増を防止する技術です。

三ツワポンプ製作所では、特定のポンプモデルにおいて、故障発生の兆候を9割の正確性で予測することに成功しています。
これは、ポンプの稼働データやセンサーデータなどをAIで解析し、異常パターンを学習することで実現されています。

メリット

故障を未然に防ぐことで、生産ラインの停止時間を最小限に抑え、生産効率の向上に貢献しました。
また、突発的な故障に伴う修理費用や部品交換費用を削減できます。 故障による事故のリスクを低減し、作業員の安全確保にも繋がりました。
さらに、経験に基づく判断に頼らず、AIが客観的な判断を行うことで、人材の負担を軽減できます。

参考サイト:経済産業省.”AI導入ガイドブック”.https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/AIguidebook_PredictiveMaintenance_FIX.pdf.(2024/9/9)

富士電機のAI予知保全の導入事例

富士電機は、AI技術を活用した予知保全において、業界をリードする存在の一つです。
同社は、製造業における様々な課題解決にAIを応用し、特に予知保全分野では、振動、温度、電流など、様々な種類のセンサデータを収集・解析することで、より精度の高い故障予知を実現しています。
加えて機械学習アルゴリズムを用いて、従来の統計的手法では捉えられなかった微細な異常を検知し、故障の早期発見に貢献しています。
富士電機は現場に密着したソリューションを提供しています。
例えば、食品製造現場向けに特化した「SignaEdge」など、現場のニーズに合わせた解決策を提供しています。
そしてAIに熟練作業者の経験や勘をAIに学習させることで、より人間に近い判断が可能になります。

富士電機は、様々な業界でAI予知保全を導入し、成果を上げています。
食品製造業では、製品の品質低下につながる異常を早期に検知し、迅速な対応を行うことで、高い顧客満足度を実現しています。

化学製造業における導入事例では、数値管理や遠隔操作は行っていたものの、人による判断に頼っており、監視対象が増えるにつれて作業負荷が高まるという課題がありました。
そこで、富士電機のAI技術を搭載したMainGATE/MSPCを導入し、異常兆候検知を自動化しました。
その結果、異常兆候をスピーディに検知し、高度な故障予知を可能にしました。
人による判断ミスを減らし、作業効率を向上させました。

食品製造業における導入事例では、多品種切替え生産において、熟練作業者による改善活動・メンテナンスには限界がありました。
そこで、IoTやアナリティクスAIを活用し、生産設備の稼働状況の見える化、ヒューマンエラーの防止、熟練作業のノウハウのデジタル化を実現しました。
結果的に、生産設備の稼働率向上、製品品質の安定化、技術伝承の効率化に貢献しました。

射出成形機では、スクリュー交換時期の検知を行い、製品不良率の低減や点検作業の効率化を実現しました。
切削加工機には、工具の状態を「見える化」し、異常傾向を抽出し、工具費削減やサイクルタイム短縮を実現しました。

参考サイト:富士電機公式サイト.”AI技術による予知保全を実現する現場型診断装置。PLC・振動センサに対応。食品製造現場のデータ活用を支援。” https://www.fujielectric.co.jp/products/foodfactory/solution_detail/solution_signaiedge.html (2024/9/9)

株式会社YE DIGITALの外観検査AIについて

株式会社YE DIGITALは、AIを活用した外観検査ソリューションを提供している企業です。
特に、製造現場におけるリアルタイムなAI画像判定に強みを持ち、食品業界を中心に多くの導入実績があります。

YE DIGITALの外観検査AI「MMEye」は、エッジ端末活用をしているので現場でリアルタイムに画像判定が可能です。
加えて、ディープラーニングと独自の前処理技術により、複雑なパターンも高精度に検出できるのにもかかわらず、AIの専門知識がなくても、GUIから簡単に操作できます。
そしてParadigmはYE DIGITALが開発した独自のAIエンジンです。 異常検知、物体検知、分類など、幅広い検査に対応しているため、様々な製品や製造ラインに適用可能です。

食品製造における厳しい衛生基準に対応した実績が豊富で、専門知識がなくても導入でき、短期間で効果を実感できます。
人間の目では見つけにくい微細な欠陥も検出できるAIが、導入企業の人件費削減や不良品発生による損失の減少に貢献しています。

YE DIGITALの外観検査AIの活用事例

食品業界では、クッキーやチョコレートのひび割れ、形状異常、異物混入したり、肉や魚の解凍、変色、異物混入の検出を行っています。
製造業では、自動車部品や電子部品の外観検査を行っています。

参考サイト:YE DIGITAL.”AI画像判定サービス MMEye”.https://www.ye-digital.com/jp/product/mmeye/.(2024/9/9)

Antinaは、AI(人工知能)を活用した外観検査システムを提供している企業です。
従来、人の目で行っていた製品の外観検査を、AIに置き換えることで、より高精度で高速な検査を実現します。

具体的には、傷、汚れ、変形など、製品の外観上の欠陥を自動で検出したり、製品の中に混入した異物を検出します。
また製品寸法の測定を自動化し、公差範囲外の製品を検出し、製品のパターンや形状を認識し、不良品を判別します。

食品製造業では、お菓子の製造ラインで、製品の中に混入したナッツの殻やプラスチック片などを検出し、食品の安全性を高めています。
形状検査の面では、冷凍食品の形状が規格通りであるか、変形や破損がないかを検査し、品質を維持しています。
食品の色味が均一であるか、変色していないかなど色味検査も行い、消費者の品質に対する期待に応えています。

電子部品製造業では、半導体ウェハ検査において、半導体ウェハ上の欠陥や異物を検出し、製品の歩留まり向上に貢献しています。
プリント基板上のハンダ不良や部品の配置ミスを検出し、製品の信頼性を高めています。 極めて小さな電子部品の外観検査を自動化し、人手不足の問題を解決しています。

自動車部品の塗装ムラや傷を検出し、製品の品質を向上させています。
プラスチック部品の形状が規格通りであるか、バリやヒケがないかを検査しています。 エンジン部品の中に金属片などの異物が混入していないかを検査し、製品の安全性に貢献しています。

また、製薬業界では錠剤の形状や刻印の検査、カプセルの充填状態の検査を行い、化粧品業界においては、容器の破損検査や中身の漏れ出し検査を行っています。

参考サイト:Antina公式サイト https://www.astina.co/ai-robotics/ai-visual-inspection/ (2024/9/9)

UMWELTによる在庫管理と需要予測AIについて

UMWELTは、ノーコードで高精度な需要予測と発注が可能なAIツールです。
在庫管理において、需要予測の精度向上は、過剰在庫によるコスト削減や、品切れによる機会損失を防ぐために非常に重要です。 UMWELTがどのように在庫管理に貢献できるのか、詳しく見ていきましょう。

UMWELTの強みは、過去の販売データだけでなく、外部データ(天候、経済指標など)も考慮することで、より高精度な需要予測が可能な点です。
また、プログラミングの知識がなくても、直感的な操作で予測モデルを作成できるため、導入も短期間で完了し、すぐに業務に活用することができます。
さらに、予測結果に基づいて最適な発注量を自動計算し、発注書の自動作成まで行えるため、作業ミスを減らし効率化が図れます。
小売業だけでなく、製造業や卸売業など幅広い業界での活用が見込まれています。

UMWELTを導入することで、在庫コストの削減が可能です。 過剰在庫を減らし、在庫回転率を向上させることで、在庫保管費用や機会損失を減らすことができます。
また、需要を正確に予測することで、品切れによる顧客離れを防ぎ、売上向上に貢献できます。 特に季節変動が大きい商品や人気商品の需要変動に対して効果を発揮します。
さらに、予測や発注作業の自動化により、人的ミスを減らし、業務効率を大幅に改善できます。 予測結果を可視化することで、経営層や部門間の意思決定をサポートし、データに基づいた科学的な意思決定を可能にします。

UMWELTの活用事例

UMWELTの活用事例としては、新商品の需要予測、季節商品の在庫最適化、販促効果の測定などがあります。
小売業においては、化粧品メーカーが新商品の発売に伴う需要予測や、季節変動による在庫管理を効率化しています。
また、アパレルメーカーではファッショントレンドの変動を早期に捉え、過剰生産の抑制と売れ残り商品の削減を実現しました。
食品メーカーにおいては、賞味期限が短い商品の在庫管理や、季節イベントに合わせた需要変動への対応が可能となり、食品ロス削減と生産効率向上に貢献しています。

参考サイト:UMWELT公式サイト https://tryeting.jp/umwelt/ (2024/9/9)

オムロンの未来の製造業AIロボットについて

オムロンは、製造業におけるAIとロボットの活用において、非常に先進的な取り組みを行っています。
同社のAIロボットは、単なる自動化を超え、「知能化」された生産ラインを実現するための重要な要素となっています。
オムロンのAIロボットは、従来のロボットでは難しかった多品種少量生産や、部品の形状が頻繁に変わる状況でも高い柔軟性を発揮します。

深層学習による画像認識を使って、AIが製品の形状や位置をリアルタイムに認識し、最適なグリップ方法や組立順序を決定します。
さらに、力覚センサを搭載することで、部品を傷つけずに繊細な作業を行うことができ、突発的な状況の変化にも対応できるようロボットが自ら動作を修正します。
例えば、スマートフォンの小型部品の組立では、形状が複雑で頻繁にモデルチェンジが行われるため、従来の自動化が難しかった作業をAIロボットが担うことで、高品質な製品を安定的に供給できるようになりました。

また、AIロボットは人間の目では見つけられないような微細な傷や異物を検出することもできます。
高解像度のカメラとAI画像処理技術を組み合わせることで、製品表面の微細な傷や汚れを検出し、3Dビジョンシステムを使用して製品の形状を正確に計測し、寸法誤差や形状異常を検出します。
AIが過去のデータから学習した正常な製品の画像と比較し、異常を検出して不良品を自動的に排除します。
例えば、自動車部品の表面検査では、人間の目では見つけられない微細なひび割れや異物を検出し、製品の品質向上に貢献しています。

さらに、複数のAIロボットが連携することで、より複雑な作業を行い、タスクの自動割り当てが可能になります。
AIが各ロボットの能力や作業状況を把握し、最適なタスクを割り当て、ロボット同士がリアルタイムで情報を共有して連携することで、作業効率を向上させます。
また、生産ラインのレイアウト変更にも柔軟に対応できます。
例えば、大型製品の組立では、複数のロボットが協調して作業し、安全柵なしで人と協働できるよう設計されています。
力覚センサや視覚センサで人と接触した場合には、ロボットがすぐに動作を停止し、安全な距離を保ちながら作業を支援します。

オムロンのAIロボットは、製造現場の様々な課題を解決し、生産性を向上させるための強力なツールです。
柔軟な部品組立、検査工程の自動化、ロボット同士の協調作業、人との協働など、その活躍の場は広がっています。

参考サイト:オムロン公式サイト “AIの可能性を生産現場で実現” https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/696.html (2024/9/9)

まとめ

日本の製造業は、AI導入によって生産性の向上やコスト削減を実現し、浮いた資金を新しい設備や開発費に充てることが可能です。
AIの活用は、日本の製造業が国際競争において優位性を保つために不可欠な要素となっています。
しかし、中小企業がAIを導入するには、資金面や技術的な支援が必要です。
特に、AI導入には高額な初期投資や専門的な知識が求められるため、政府や金融機関からの支援や、導入ノウハウの提供が不可欠です。
国を挙げて中小企業への支援策を拡充し、AIの導入を促進することで、日本全体の産業競争力を高めることが重要です。